ウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演が追加利上げの可能性を残し、ドルが8通貨で独歩高。ドル円は7月末の介入以降で初めて160円台を回復して越週した一週間でした。

1. 先週の金融市場まとめ(8/24~8/28)

■ 主要銘柄の週間騰落

銘柄 金曜終値 週間騰落率 週間レンジ(H/L)
USD/JPY 160.038 +0.74% 160.038 / 159.066
EUR/USD 1.1587 -0.78% 1.1677 / 1.1587
EUR/JPY 185.434 -0.09% 185.792 / 185.434
GBP/JPY 216.548 -0.11% 217.242 / 216.418
AUD/JPY 114.634 +0.59% 114.650 / 113.715
GBP/USD 1.3538 -0.81% 1.3647 / 1.3538
日経平均 66,405.56 +0.59% 66,405.56 / 65,528.09
NYダウ 53,559.99 +0.53% 53,577.40 / 53,417.16
S&P500 7,711.76 +0.49% 7,730.99 / 7,652.86
ゴールド(NY金) 4,529.9 -3.22% 4,697.80 / 4,529.90
WTI原油 83.40 -4.20% 85.01 / 82.23

※週間騰落率は先週金曜NY引けに対する金曜NY引けの変化率。週間レンジは月~金の終値ベースの高安。FX・株価指数・コモディティはYahoo!ファイナンスJP(確定終値)より取得。

■ 主要ニュース

  • ウォーシュFRB議長がジャクソンホール会議で議長として初の基調講演(28日)。基調インフレ率が2%目標に向かっていると確信できなければ「まだやるべき仕事がある」と述べ、追加利上げの可能性に含みを持たせました。金融環境を引き締め的と表現するのは「難しい」、信用市場や融資市場に政策の抑制効果を示す兆候はほとんど見られない、とも指摘。市場は9月16日のFOMCが「ライブ」な会合になったと受け止め、ドルが全面高となりました。
  • 7月30日~8月26日の為替介入額は15兆3993億円と過去最大(28日、財務省)。7月30日夜に163円台から157円台へ急伸した局面と、31日(米東部時間)の約15年ぶりの日米協調介入を含む期間です。4月末~5月初の11兆円超と合わせ、2026年の介入総額は27兆1342億円となり、年間ベースでも過去最大を更新しました。
  • 米7月PCEデフレーター(PCE、個人消費支出物価指数)は前年同月比+3.7%(26日、予想+3.6%)。コア(食品・エネルギーを除く)は+3.3%と前回並みで予想どおり、前月比は+0.2%です。4-6月期GDP改定値も前期比年率+1.5%と速報から変わらず、個人消費は上方修正されました。FRBが最も重視する物価指標が3%台後半に居座り続けていることが、28日の議長講演の伏線になっています。
  • 欧州中央銀行(ECB)が7月22-23日理事会の議事要旨を公表(27日)。追加利上げの必要性が認識されていたことが明らかになり、9月9-10日の理事会で中銀預金金利を2.25%から2.50%へ引き上げる用意があると報じられました。ただしユーロドルはこの日ほぼ変わらず(1.16577ドル)で、週間でも-0.78%と反応は限定的です。
  • 米8月シカゴPMI(購買部協会景気指数)は47.1(28日、予想57.9・前回57.6)と10ポイント超の急落。好不況の分かれ目である50を大きく割り込みましたが、議長講演の直前だったこともあり為替への影響は限られました。同じ日の8月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)は51.7(予想51.0)です。
  • カナダの4-6月期GDPは前期比年率+3.3%(28日、予想+3.4%・前回-0.1%)。マイナス成長から一気に3%台へ戻しましたが、カナダドルは8通貨中6位にとどまりました。トランプ米大統領が24日にカナダ産の自動車・鉄鋼などへの関税を2027年1月から50%へ引き上げると表明した通商摩擦が重石になっています。
  • 韓国銀行が政策金利を2.75%から3.00%へ引き上げ(27日)。7月に続く2会合連続の利上げです。
  • NY金は週間3.22%安の4,529.9ドル、WTI原油は同4.20%安の83.40ドル。前週にそろって5%超上げた反動と中東情勢の緊張緩和で巻き戻され、28日はドル全面高が追い打ちとなって金だけで1日2.88%下げました。
  • 日経平均は週間+0.59%の66,405円56銭。26日引け後のエヌビディア決算(5-7月期売上高962億2000万ドル、予想923億8000万ドル)を受けて27日の米ナスダック総合は+1.57%となった一方、日経平均は同じ材料で1,172円の値幅を往復して3日ぶり反落という食い違いが出ました。28日は273円高で切り返しています。
  • IMM通貨先物の円売り越しは6万3298枚(25日時点、1万405枚の売り越し増)。レバレッジド・ファンズも8万1619枚の売り越しで7978枚増えました。一方でユーロ・ポンド・スイスフランは売り越しが減っており、ドル買いの裏側で円だけが売られる形が続いています。

■ 主要指標の結果

発表日 指標 前回 予想 結果
8/25(火) ドイツ 4-6月期GDP改定値(前期比) +0.2% +0.2% +0.3%
8/25(火) ドイツ 8月Ifo企業景況感指数 86.6 87.2 88.8
8/25(火) 米国 7月新築住宅販売件数(前月比) +1.6% -1.3% -10.5%
8/25(火) 米国 8月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード) 90.8 90.2 89.4
8/26(水) 米国 7月PCEデフレーター(前年同月比) +3.7% +3.6% +3.7%
8/26(水) 米国 7月コアPCEデフレーター(前年同月比) +3.3% +3.3% +3.3%
8/26(水) 米国 4-6月期GDP改定値(前期比年率) +1.5% +1.5% +1.5%
8/27(木) ユーロ圏 ECB理事会議事要旨 追加利上げに前向き
8/27(木) 米国 新規失業保険申請件数 20.8万件 20.3万件
8/28(金) 日本 8月東京都区部CPI(生鮮食品を除くコア・前年比) +1.9% +1.8% +1.8%
8/28(金) 日本 7月完全失業率 2.5% 2.5% 2.4%
8/28(金) ユーロ圏 8月景況感指数 96.9 97.5 98.4
8/28(金) カナダ 4-6月期GDP(前期比年率) -0.1% +3.4% +3.3%
8/28(金) 米国 8月シカゴPMI 57.6 57.9 47.1
8/28(金) 米国 8月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値) 51.0 51.0 51.7

■ 週間騰落率TOP5

順位 通貨ペア 週間騰落率 金曜終値
1位 NZD/USD -1.13% 0.5914
2位 USD/CHF +1.06% 0.8093
3位 USD/CAD +1.00% 1.3901
4位 GBP/USD -0.81% 1.3538
5位 EUR/USD -0.78% 1.1587

上位5本のうち4本がドルストレートで、しかもすべてドル買い方向です。NZドル/米ドルが-1.13%で最大の下げ幅、米ドル/スイスフランが+1.06%、米ドル/カナダドルが+1.00%と続きます。円絡みのペアが1本も入らなかったのは、ドル円が+0.74%と動いた一方でクロス円がほぼ横ばいだったためで、今週の主役は円ではなくドルでした。

■ 週間強弱ランキング

1位 ++USD   +0.81%
2位 +AUD    +0.22%
3位 -JPY    -0.01%
4位 --EUR   -0.30%
5位 --GBP   -0.30%
6位 --CAD   -0.64%
7位 --CHF   -0.71%
8位 --NZD   -0.77%

米ドルが+0.81%で唯一のプラス、残る7通貨がすべてマイナスという分かりやすい形になりました。2位の豪ドル(+0.22%)から8位のNZドル(-0.77%)までは1ポイント弱の中に収まっており、ドルだけが抜け出した「一強七弱」です。3位の円が-0.01%とほぼ中立に着地したのは、対ドルで売られた分を対欧州通貨・対オセアニア通貨で取り返したためで、円そのものが弱かったわけではありません。

ボラティリティ(今週の値幅)

今週の判定は市場全体が「もみ合い」でした。ボラ比の中央値0.97倍、水準は1年で下から38%。主要4ペアもすべてもみ合いで、ユーロ円99銭・ポンド円128銭は13週中央値の半分以下まで縮んでいます。ドル円だけは値幅173銭とふだん並み(0.99倍)ですが方向性0.10で、160円台に乗せた割に行って来いの中身でした。

2. 今週の金融市場(8/31~9/4)

■ 経済指標カレンダー(JST・重要度★3優先)

日付 時刻 指標・イベント 重要度 前回 予想
8/31(月) 10:30 中国 8月製造業PMI ★★ 49.2 49.4
8/31(月) 21:00 ドイツ 8月消費者物価指数・速報値(前年比) ★★ +2.8%
9/1(火) 18:00 ユーロ圏 8月消費者物価指数・HICP速報値(前年比) ★★★ +2.9%
9/1(火) 23:00 米国 8月ISM製造業景気指数 ★★★ 55.6 55.4
9/1(火) 23:00 米国 7月JOLTS求人件数 ★★ 735.9万人 730.0万人
9/2(水) 10:30 オーストラリア 4-6月期GDP(前期比) ★★ +0.3% +0.4%
9/2(水) 11:00 ニュージーランド ニュージーランド準備銀行 政策金利 ★★★ 2.50% 2.75%
9/2(水) 21:15 米国 8月ADP雇用者数 ★★★ 4.4万人 3.9万人
9/2(水) 22:45 カナダ カナダ銀行 政策金利 ★★★ 2.25% 2.25%
9/3(木) 21:30 米国 貿易収支(7月) ★★ -733億ドル -716億ドル
9/3(木) 23:00 米国 8月ISM非製造業景気指数 ★★★ 54.1 54.3
9/4(金) 21:30 米国 8月雇用統計(非農業部門雇用者数) ★★★ -2.3万人 +6.0万人
9/4(金) 21:30 米国 8月雇用統計(失業率) ★★★ 4.1% 4.2%
9/4(金) 21:30 カナダ 8月雇用統計(雇用者数) ★★ +7.51万人

■ 今週のテーマ

  • 4日(金)の米8月雇用統計が今週最大の数字です。非農業部門雇用者数は前回-2.3万人からの反転で+6.0万人、失業率は4.1%から4.2%への悪化が予想されています。ウォーシュFRB議長が「労働市場は安定している」と述べた直後だけに、ここが崩れると9月16日のFOMCに向けた利上げ観測の前提が変わります
  • 2日(水)はニュージーランドとカナダの中銀会合が同じ日に並びます。ニュージーランド準備銀行は2.50%から2.75%への追加利上げが予想され、カナダ銀行は2.25%据え置きの見込み。利上げサイクルを回しているのは日本銀行とニュージーランド準備銀行の2行だけ、という構図がここで維持されるかどうかです。
  • 1日(火)のユーロ圏8月HICP(消費者物価指数の調和指数)速報値(前回+2.9%)。ECBが議事要旨で9月の追加利上げに前向きな姿勢を示した後の数字で、9日から10日の理事会の織り込みに直結します。同じ日の23時には米8月ISM製造業景気指数(予想55.4)も控えています。
  • 介入の「次」をどう見るか。7月30日から8月26日までの15兆3993億円という額が判明したその日に、ドル円は160円台へ戻りました。年間27兆円を超える規模を投じた後の水準回復であり、当局の対応と市場の距離感が今週の論点のひとつになります。

3. ドル円とユーロドルの現在位置

■ドル円 日足分析

※日足チャートにボリンジャーバンド(21)の±2σと200SMA、RCI(9,26,52)を表示

8月の1か月間をかけ、介入で下げた分を着実に取り返している感じがします。

ずっと効いてきた水平線も上に抜けたため、円安になるんだろうなぁ…って形状です。

■ユーロドル 日足分析

※日足チャートにボリンジャーバンド(21)の±2σと200SMA、RCI(9,26,52)を表示

トレンドレスですね。このボリンジャー+1σの抜け方は、しばらく下げるんだろうなという感じです。

4. 気になる通貨ペア:AUDCAD

ずっとレンジ相場を堅持してきた豪ドルカナダドルが、上抜けか?という形状に。

GPT-Tradeなどのリピート自動売買で、ひそかに人気だったレンジペアだけに、今後に注目です。

5. 世界の金利動向

■ 先進国の政策金利(8/30時点・出典:外為どっとコム)

国・地域 政策金利 直近の動き 次回会合
日本 1.00% 2026年6月 +0.25% 9月18日
米国 3.50-3.75% 2025年12月 -0.25% 9月16日
ユーロ圏 2.25%(預金ファシリティ) 2026年6月 +0.25% 9月10日
英国 3.75% 2025年12月 -0.25% 9月17日
カナダ 2.25% 2025年10月 -0.25% 9月2日
豪州 4.35% 2026年5月 +0.25% 9月29日
ニュージーランド 2.50% 2026年7月 +0.25% 9月2日
スイス 0.00% 2025年6月 -0.25% 9月24日
ノルウェー 4.25% 2026年5月 +0.25% 9月24日
スウェーデン 1.75% 2025年9月 -0.25% 9月24日

■ 新興国の政策金利

国・地域 政策金利 直近の動き 次回会合
香港 4.00% 2025年12月 -0.25% 9月17日
中国(最優遇貸出金利・1年) 3.00% 2025年5月 -0.10% 9月21日
南アフリカ 7.00% 2026年5月 +0.25% 9月23日
トルコ 37.00% 2026年1月 -1.00% 9月10日
メキシコ 6.50% 2026年5月 -0.25% 9月24日
ロシア 14.00% 2026年7月 -0.25% 9月11日
ハンガリー 5.50% 2026年8月 -0.25% 9月22日
チェコ 3.75% 2026年6月 +0.25% 9月24日
ポーランド 3.75% 2026年3月 -0.25% 9月9日

利上げのサイクルを回しているのは日本銀行とニュージーランド準備銀行の2行のままです。そのニュージーランドは2日(水)に会合を迎え、2.50%から2.75%への追加利上げが見込まれています。同じ日にカナダ銀行の会合もあり、こちらは2.25%据え置きの予想。マイナー通貨では先週25日(火)にハンガリー国立銀行が5.75%から5.50%へ利下げし、次回9月22日の会合は9月のインフレ予測を見てから判断するとしています。

主要15通貨の金利見通しマップ

利上げ局面にあるのは日本銀行とニュージーランド準備銀行の2行だけで、残る13中銀は据え置きか利下げです。今週は2日(水)にニュージーランドとカナダ、来週以降は9日のポーランド、10日の欧州中央銀行とトルコ、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と会合が続きます。マイナー通貨ではハンガリーが先週25日(火)に5.75%から5.50%へ下げ、連続利下げの局面に入りました。

6. FX業界ニュース

国内FX業者(金融庁登録の業者のみ)の今週の新着情報です。

  • 外為どっとコム:スイスフラン/トルコリラ(CHF/TRY)で売りポジションを持つ顧客のスワップポイント評価額合計が14億1,432万2,886円を突破したと8月20日に発表しました(8月19日10時時点)。同社が同ペアの取り扱いを始めたのは2026年4月27日で、4カ月弱での到達です。スポット評価とスワップ評価を合算した評価損益では87.2%の顧客がプラスとのこと。高金利のトルコリラを売って低金利のスイスフランを買う組み合わせは、金利差がそのままスワップになる代わりにリラ側の急変動をまともに受ける建て付けでもあります。
    ▼外為どっとコム(公式)【サービス実績】スイスフラン/トルコリラ(CHF/TRY)のスワップポイント評価額合計が14億円を突破!
  • GMOクリック証券:「FXネオ」で実施していたメキシコペソ/円の期間限定スプレッド0について、当初予定を繰り上げて終了すると8月17日に告知しました。8月3日に始めたキャンペーンで、各営業日の午前9時から翌未明までスプレッドを0で提供していたものです。終了後は通常の0.2銭に戻るため、1万通貨の往復で20円、10万通貨なら200円のコストが復活します。キャンペーン期間中に建てたポジションを持ち越している場合、決済時に適用されるのは終了後のスプレッドです。
    ▼GMOクリック証券(公式)【メキシコペソ/円】期間限定スプレッド0の提供終了に関するお知らせ

7. シカウチから一言

暗号資産が元気です。ビットコイン円は、1000万円を切っていたところから、1300万円を疑うところまで上昇しています。

半減期を土台にした4年サイクルによれば、今年の秋につける安値が大底になる見込みがあるため、そろそろ動き出す準備か…?


本配信はシカウチ(雑誌『外国為替』編集長)が個人として行っています。情報提供のみが目的であり、投資助言・売買推奨ではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。本配信では金融庁登録の国内業者の情報のみを扱います。
配信元:シカウチ(雑誌『外国為替』編集長・個人)

ABOUT ME
シカウチ
FX雑誌「外国為替」の編集長。FX攻略.comの副編集長として11年間、取材・執筆・編集に携わったのちに独立。トレーダーとして、自動売買中心にFXの運用を行う。
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